書影

社長室の冬 

最近読んだ本。~ブログ不慣れにつきネタばれの危険あり、未読の方はご注意ください~

小説。社長室の冬 堂場瞬一著。集英社文庫。

ビジネス小説、企業小説、サラリーマン小説というジャンルでしょうか。

日本新報という大手新聞社が舞台。

南という事件記者が、社長室への転勤を命じられ、いきなり社運のかかる難題~新聞社を外資系ネットニュース企業に身売りする買収交渉という極秘プロジェクト~に立ち向かうハメになる、という物語。

2016年の書き下ろし。最近、文庫化されたという新聞広告を目にして、書店で目にして買ってみた。

著者の堂場さんはもともと読売新聞社の記者だったそうです。いまは警察小説などで有名かと思います。

堂場さんの本を読むのは2冊め。1冊めのタイトルは確か「警察(サツ)周りの夏」だったかな。こちらも同じ南記者が主人公。山梨で起きた事件をとおしてジャーナリズムの問題を描いていた、かな(細かい筋は忘れてしまったのですが汗)

つまり、「社長室の冬」は、南記者を主人公にした3連作の、3冊目なんですね。

2作目は「蛮政の秋」というそうで、まだ読んでませんが、2作目では、甲府支局から本社の社会部に晴れて異動となった南記者でしたが、またでかいヤマにぶちあたり…どうも、山梨出身の政治家とメディアの間のしびれる関係が描かれているようです。

3部作のタイトルは、夏→秋→冬 と季節が動いている。

もちろん3部作をとおした時間のながれは1年間の中ですべて終わるというわけではなく、南記者が、駆け出しと言っていいギラギラした支局時代から、脂ののってきた社会部(収穫期)、社長室での難題(じっと我慢)…と、数年レンジのなかでの、南記者の成長物語になっているようでもある。

扱うテーマも、

夏…新聞ジャーナリズム、事件記者、匿名報道か実名報道か

秋…新聞ジャーナリズム、メディア企業と政治家の関係性、メディア規制、ネット規制

冬…新聞メディアのビジネスモデル、ネットニュース、外資、日刊新聞紙法と買収規制

といったように、季節が下るにしたがって、「現場」がかわり、広がりあるテーマに立ち入ってゆく。

ちなみに、「蛮政の秋」、これ読んでません。2作目を飛ばして3作目を手に取ってしまった、わるい読者です。

いわば、「新たなる希望」を見たあと、「帝国の逆襲」をとばして、いきなり「ジェダイの復讐」を見てしまったような、作品の味わい方として非常にもったいないというか…

どうぞみなさんはマネしないように…(でも配慮が行き届いた書き方がなされており、1作目、2作目を読まなくてもとくに差し支えなかったです。「そういうことが下敷きになっているんだな」とさりげなく説明してくれています笑)

堂場さん、いまは警察小説の旗手であられると思いますが、やはり新聞記者出身だけあって、新聞社への想い入れ、心配、郷愁、メディアやジャーナリズムへの現状への憂慮といったものを感じました。

また、小ネタとしては、銀座~新橋での打ち合わせが多い、創刊から140年、米系外資系ネットニュース社のトップは女性、などなど、かなり真に迫ってるのではないかと思いました。

外資系ネットニュース側の日本法人トップが、南とおなじ新聞社をむかし辞めた人間で、当時エース記者だったけど特派員に出る直前に、理系出身だからとネット立ち上げチームに行かされ、そこで不遇を感じ辞める…いろいろあったけどいまはネットニュースの代表の座におさまり、復讐に燃えているようにも見える、といったあたりも、何となく実在モデルがいそうでリアルです笑

具体的には、読売と朝日と毎日と日経と産経、ヤフー、バズフィード、ハフポスト…といったあたりを絶妙にミックスさせているようで、どこがモデルとも言い切れないあたりが真骨頂かと思いました。

書影
社長室の冬、堂場瞬一著

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